2015/04/23 雑記「宝玉は鉱石を破って光る」

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今日は、やる気のスイッチ となりそうな詩を紹介します。

太宰治の「人間失格」で、主人公の葉蔵が触れた詩。

それは、ギイ・シャルル・クロオ の 「世間のある人人には…」（上田敏 訳）という作品です。

人生をヒキガエルで過ごすか、
輝きを見出して自分の殻を打ち破るか。

現代の仮名遣いに直してみましたので、
クロオ繋がりで（？）一度読んでみてください。

世間のある人々には…

（前略）
ある人々には、一体、
生（いのち）はごく手軽な造作も無い尋常一樣の事で、
手紙を書いたり、一寸は「あそび」もしたり、
とにかく「用事」は済ませてゆく。

してその翌日も同じ事を繰返して、
昨日に異（かわ）らぬ慣例（しきたり）に従えばよい。
即ち荒っぽい大きな歓楽（よろこび）を避けてさえいれば、
自然また大きな悲哀もやって来ないのだ。
ゆくてを塞ぐ邪魔な石を
蟾蜍（ひきがへる）は廻って通る。

しかし、君、もし本当に生きていたいなら、
その日その日に新しい力を出して、
荒れ狂う生（いのち）、鼻息強く跳ね躍る生（いのち）、
御（ぎょ）せられまいとする生（いのち）にうち克たねばならぬ。

一刻も息（やす）む間の無い奇蹟を行ってこそ
乱れそそげたこの鬣（たてがみ）、
汗ばみ跳ずむこの脇腹、
湯気を立てたるこの鼻頭は自由に出来る。

君よ、君の生（いのち）は愛の一念であれ、
心残りの錆（さび）も無く、
後悔の錆も無く、
鋼鉄の清い光に耀け。

君が心はいつまでも望と同じく雄大に、
神の授けの松明（たいまつ）を吝（おし）むな。
塞ぎがちなる肉身から雄々しい声を噴上げよ、
苦痛にすべてうち任せたその肉身から、
従容として死の許嫁たる肉身から叫べ。
宝玉は鉱石を破って光る。

　
…原文は 青空文庫 にあります。