2015/09/10 雑記「鬼怒川氾濫」

 タグ ： 日記

ぼくの故郷、茨城県西部には「鬼怒川」が流れていて、台風の季節には時折氾濫を起こしてきました。

その名前の通り、鬼の怒りのように荒々しい流れで、時に流域を水害に晒してきたわけですが、それが今日「台風18号」の豪雨によって みたび惨事に見舞われてしまいました。

ニュースによれば、大規模な堤防決壊ではないようですが、この流域は周辺に極端な低地（水田）が広がる場所。
農作物や家畜などへの被害が心配です。

追記：
残念ながら堤防の決壊が起こり、被害が拡大しているようです（20:37）
　
…と、記録のために少しまとめてみたのですが、
せっかくなのでこの地域の水害についてバックグラウンドを紹介しておきましょう。

利根川下流の水害

利根川水系は 日本で一番大きな流域面積 を持っています。
群馬県全域と栃木県・茨城県の南半分、下流では千葉県の北部をも流域にしています。

利根川水系 ｜ 川の名前を調べる地図　より

今回水害に見舞われている茨城県西地域では、
鬼怒川 のほかに、こちらも頻繁に氾濫を起こす 小貝川、古くは「飯沼」と呼ばれた巨大な沼の干拓地の跡である 西仁連川・飯沼川・東仁連川 などがあります。
いずれも、利根川の下流に合流する利根川の支川です。

これらの河川は上流が栃木県内であるため、栃木県での豪雨は即ち下流に水害をもたらす可能性があります。
加えて、鬼怒川・小貝川では 下流に至っても蛇行が多い ことも弱点で、治水が充分とは言えません。

今回の台風では、栃木県・茨城県に 大雨特別警報 が発令され、最大級の警戒が呼びかけられています。
どちらの地域でも豪雨になったことから、一気に水量が増し、鬼怒川では堤防を越えるほどの水量になったわけです。

利根川は氾濫しないのか？

実は現在の利根川は 大規模な治水と遊水地などの確保 によって造られた姿です。

江戸時代以前は東京湾（江戸湾）に流れ込んでいた利根川ですが、ひとたび洪水を起こすと江戸北東部に大損害をもたらす暴れ川でした。
そこで利根川は東遷、銚子方面へとゆったり下る流れが確保され、従前の利根川は「江戸川」として水運と水量調整に供すために残されました。

また、栃木・群馬・埼玉・茨城の県境に近い場所には渡良瀬遊水地、飯沼川下流には菅生沼、さらに下流の水郷地域にかけて利根運河や新利根川など、多くの水量調整可能な地域が用意されているのです。

ここまで本格的に洪水への備えが出来ていれば、そうそう氾濫が起こることはありません。

いっぽうで、利根川東遷のとばっちりで海に注ぐことができなくなった鬼怒川や小貝川 が、大洪水の憂き目に遭っているのです。

農作物・家畜への被害

この地域が水害に遭うと、よく

「牛が流れていた」
「豚が流されていた」

という情報が、ネットがない時代でもまことしやかに語られました。

それは 流言飛語ではなく、この流域は豊かな農地で、河川の周辺に 水田だけでなく牛舎・豚舎が多い ことに拠る本当の悲劇だったりします。

豊かな稲穂を育む水田地域であるために、広々とした低地が続き、流域では文字通り一面に水浸しの状況になってしまうのです。

　
Twitterを見ると、水害に見舞われる現状の写真が次々に流れてきます。

水田が水浸しになると、稲は横倒しになって、重い稲穂は水を多量に含んでしまいます。
牛舎や豚舎が洪水に遭えば、河川と一体化した広い“海”に、家畜は成す術もありません。

願わくば、農作物の被害は最小限に、人的な被害には及ばないことを、遠く（ないけど）東京から願っています。